来 歴

支度

あんなにたくさんだつたけものたちが
一匹ずついなくなつて
最後に残った猫の眼も
もう眠りに行こうとしている
そのあとで
地球にはやさしい風しか吹かなくなる
私も早く私をいいつけている誰かへ
やりかけの仕事を
しあげて持つてゆかなければならない
気ばかりあせるので
身体の半分はもういなくなりはじめている
とにかくあとはしつぽをなくせば
それで支度はできあがるのだが
そのかんじんのしつぽが
はじめから私には見あたらないので
未だにぐるぐると
眩しい太陽のまわりを歩き続けている

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